銀行の貸付自粛制度が運用されます

 新大阪・西中島の伊東弘嗣司法書士事務所の代表の伊東弘嗣です。

 本記事は司法書士の立場で書きます。

 さて、平成31年3月29日から、全国銀行協会全国銀行個人信用情報センター(以下、「センター」とします。)にて、貸付自粛制度の運用が始められます。

 貸付自粛制度と言えば、日本貸金業協会(以下、「協会」とします。)が、その設立(平成19年12月)の当初から運用しています(なお、古くは協会の前身の全国貸金業協会連合会の時代から貸付自粛制度は運用されていたようです。)。

 そして、ほとんど(すべての?)金融機関は協会の会員になってますから、これまでも銀行は、協会の貸付自粛情報を知ることができたはずです。

 では、なぜ今更銀行が貸付自粛制度を、という気がしますね。

 ここからは私の個人的な推測ですが、この理由は、銀行には協会の会員になる義務がなかったからだと思います(銀行は、貸金業法の規制を受けるのではなく、銀行法の規制を受けています。)。すなわち、協会の会員銀行は、協会の情報を与信審査の参考にするもしないも全く自由だったということなのだと思います。

 これに対し、新しいセンターでの貸付自粛情報は、与信審査の際の利用が努力義務にはなったようです(それでもなお努力義務にすぎませんが。)。

 そして、協会と同様に申告から3か月は撤回ができません。なお、全国貸金業協会連合会の頃は、家族と連名で申告し、本人が撤回を求めても家族の同意がなければ撤回できない、なーんて運用をしていた時期もあったようですが、協会担当者に聞きましたところ、今はこういうことは一切できないとのことです。センターも以下の要綱を見れば、協会とほぼ同じ建付けですね。

 なので、貸付自粛を維持しようとすると、3か月毎に申告するしかない??実際にそんな(面倒な)ことしている方もおられるようです。

 もっとも、センターに限らず協会の情報もそうですが、そもそも、貸付自粛情報があったとしても貸すこと自体は制限されていないんです。この制限を一律にすると、独占禁止法に抵触する恐れがあるから、なのだそうです。

 したがって、極論すると、貸付自粛制度は「なーんも意味がない!」制度です。あくまで極論ですが。

 また、ギャンブラーさんの性質を考えると、金融機関の借入を制限したところで、友人・知人などからの借入などは制限できません。ギャンブル真っただ中のギャンブラーさんの場合、中途半端に制限すると、クレジットの現金化やヤミ金からの借入、さらには(家庭内)窃盗、強盗、横領などに容易に発展する可能性が極めて高いですので、ギャンブル真っただ中のギャンブラーさん対策としては、百害あって一利なしの制度だと思います。

 なお、家族が自分の身を守るために使うとか、回復過程で利用する場合は意味がないとは言いません。

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