新大阪・西中島界隈の司法書士事務所の代表の伊東弘嗣(司法書士・社会福祉士・行政書士)です。
掲題の意見書の提出が本日までだったので、突貫で作り上げ、個人名で意見書を提出しました。時間をあまりかけずに作りましたので、誤解している点もあるでしょうし、拙い内容だと思いますが、今後のさらなる自己研鑽による知識の充実に自ら期待し、ここに晒します。
平成31年3月26日
司法書士 伊東弘嗣
ギャンブル等依存症対策推進基本計画案に対する意見書
1 計画案全般についての意見
(1) 「ギャンブル等依存症対策」を「ギャンブル等被害対策」に変更すべきである。
「依存症」という文言を用いると、対策の対象があたかも依存症という診断がなれた者に限定されるという誤解を生む恐れがある。本基本計画案は、早期発見、早期治療・回復をも目的としているのであるから、今後依存症になりうる恐れもあるような人も広く含むと一般人が一目で分かるような用語に変更すべきである。
また、ギャンブル等にハマることによって困難を抱えるのは本人だけでなく、その家族、親族、友人、知人、勤務先会社など幅広い。これらの者へ悪影響への対策も併せて講じる必要があり、対策の対象を広く捉えられる用語を用いるべきである。
そもそも、依存症者は、自らの嗜好のみでギャンブルにハマるのではない。射幸性の高いギャンブルの魅力に取りつかれ、自らではコントロールできなくなり、度を過ぎたギャンブルをするに至るのである、すなわち、ギャンブル等依存症は病気であり、自己責任論で片付けられるべきものではない。ギャンブルにハマった結果、家庭崩壊を招き、友人知人との関係が崩れ、失業し、自身の生活や家族の生活が破綻し、本人は失踪し、時には自傷行為等に至ることもある。ギャンブル等依存症になり、本人やその周囲の者が抱えることとなった困難は、ギャンブル等が原因となった被害と言えるから、ギャンブル等の被害に対する対策とすべきである。
(2) なお、日本には、すでに公営競技やぱちんこ等が存在し、その被害者も既に多数存在する。また、公営競技やぱちんこ等は今後も存在し続けるのであろうから、ギャンブル等の被害の対策は、今後日本へのカジノ設置の有無に左右されることなく、対策が講じられるべきものである。
2 「はじめに」に対する意見
冒頭に、「多くの人が競馬等の公営競技やぱちんこ等を健全に楽しんでいる。」とする。しかしながら、競馬等の公営競技は、公営とはいえ遊戯ではなく「賭博」なのであり、「賭博」を「健全に楽しむ」ことがありうるのか、はなはだ疑問である。
また、「多くの人が」「健全に」とするが、その根拠はどこにあるのか。平成29年の疫学調査で、ギャンブル等依存症の疑いのある者は、過去1年間に限っても70万人もいると言われている。他方、レジャー白書2018によれば、2017年のぱちんこ参加人口は900万人である。仮に、ギャンブル等依存症の疑いのある人口のほとんどがぱちんこ参加者だとすると(基本計画案でも「最もよくお金を使ったギャンブル等は、ぱちんこ・パチスロが最多であった」とのことであるから、その可能性は低くはないはずである。)、ぱちんこ参加人口に対するギャンブル等依存症者の人口割合は8%弱ということになる。この数字を看過しているのではないかと感じる。
3 第二章Ⅰ-1
(1) 第1 競馬における広告・宣伝の在り方について
競馬は、言わずもがな公営賭博なのであるから、「遊び」という文言は止め、全て「公的賭博」に改めるべきである。
(2) 第2 競馬におけるアクセス制限等について(以下は、競馬以外の公営競技でも同様)
家族申告制度や個人認証システムの導入は控えるべきである。
なぜなら、これら制度は、本人のプライバシー権、自己決定権の侵害に繋がるものであり、本人の同意の必要のないこれら制度の導入は慎重であるべきである。なお、これら制度はギャンブル等による財産権の侵害を防ぐ趣旨と解するが、財産権とプライバシー権、自己決定権とを比較考量しても、その導入は慎重であるべきである。
(3) 第3 競馬における相談・治療につなげる取組
自助グループに対する経済的支援はすべきではない。
自助グループの団体であるGA日本によれば、「私たちは自分たちの献金だけで自立している。GAは、いかなる宗教、宗派、政党、組織、団体にも縛られていない。また、どのような論争や運動にも参加せず、支持も反対もしない。」とし、GAは何者からも影響を受けず、自立した団体である。国が経済的支援をすることになれば、この自立した団体に国が口出しを許すことに繋がることを恐れる。また、自助グループに国が経済的援助をすることになれば、その援助に群がるGAまがいの団体が必ず現れ、経済的基盤の弱いGAが駆逐されることになりかねないが、国はそれを望んでいるのか。
自助グループの数は、ギャンブル等依存症者の数に比べて格段に少ないが、その数を増やすには、会場の確保の問題がある。国、地方自治体は、金銭的支援ではなく、会場確保に向けての支援をすべきである。
公営競技やぱちんこ産業の職員研修については、どのような内容の研修をするつもりであるのか?一定の型にはまった研修も確かに必要であるが、ギャンブル依存症の回復のプロセスは、当事者の置かれている環境や当事者の特性などにより10人10様と言われており、型にはまった研修をしたからといてそれで十分というものではない。殊に発達障害とギャンブル依存症、知的障害とギャンブル依存症、精神障害とギャンブル依存症といったいわゆる重複障害の方への対応の仕方については、事例の蓄積も少なく、型にはまらない臨機応変な対応が求められるのである。型にはまるような研修で十分と考えてしまうと、職員が研修で習った型にはめて支援しようとするあまり、逆に回復を妨げることに繋がる恐れもある。研修という事実を作って満足するのではなく、その内容の充実を求めたい。
4 第二章 I-4 ぱちんこにおける取組【警察庁】
ぱちんこの問題は、射幸性の問題もあるが、一番の問題は三店方式にあるのは明らかであるから、三店方式を撤廃せよ。
5 Ⅴ 調査研究:基本法第22条関係
依存症の治療プログラムとしては薬物に対するSMMARPが有名であり、ギャンブルの治療プログラムはこの流れを組むものであるが、そもそもSMMARPは、そのプログラムをもって治療が完了するものではなく、あくまでも自助グループへの繋ぎを容易にするためのものである。したがって、治療プログラムそのものの評価も大事であるが、その後のGAへの定着率も評価すべき。また、なかなか治療の場に現れない否認の強い方のプログラムへの入りやすさなども評価の対象にすべきである。
6 Ⅶ 多重債務問題等への取組
(1) 貸金業・銀行業における貸付自粛制度の適切な運用の確保及び当該制度を必要とする者への的確な周知の実施
貸付自粛制度はあくまで努力義務であり、どの程度の効果があるのか明らかでない。そこで、その実績を公表することを求める。
(2) ギャンブル等依存症に関する相談拠点と民間金融機関との連携強化促進について
日本クレジットカウンセリング協会は相談拠点とすべきではない。
ここでは挙げられていないが、日本クレジットカウンセリング協会は、無料で相談に応じ、場合によっては無料で任意整理にも介入している。
無料という言葉は聞こえは良いが、その実、ギャンブラーにとっては、自らの負担なくして借金の問題という困難を乗り越えられることになり、これは、借金の尻ぬぐいに近いものがある。そのような相談場所を連携先にすべきでない。
きっと、後から気づいて恥ずかしいところやご指摘を受けるようなところがいっぱいあるんだろうなぁ。でも、これが今の自分の偽らざる実力ということで。
伊東弘嗣司法書士事務所
電話06-6476-9004
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